キヌコ・ヤマベ・クラフト
Kinuko Y. Craft
おどる12人のおひめさま
シンデレラ ペガサス 眠れる森の美女
「おどる12人のおひめさま The Twelve Dancing Princesses 」を再話したもの。
もともとは、グリム童話なのですが、それをアンドルー・ラングが再話したものを、さらに再話したものです。
Marianna Mayer マリアンヌ・メイヤー:再話
Kinuko Y. Craft キヌコ・Y・クラフト:絵 1989年
かんぬきのかかった部屋に眠る、十二人のお姫さまの靴が、毎朝、ぼろぼろになっているのを不審に思った王さまが、その秘密をときあかした者に姫のひとりを与える、とおふれをだします。
主人公は、夢のなかの不思議な女人の言葉にしたがって、城へと出向き、庭師となります。そして、いちばん若い、十二番目のお姫さまに恋してしまいます。
主人公は、夜、お姫さまたちの後をつけますが…
十二人のお姫さまが登場し、とても華やかななかにも、グリム童話のもつ、独特の薄暗さのようなものも感じられる絵本。ページ数は、40ページ近くあります。
東洋と西洋が溶け合ったような雰囲気の絵。
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ギリシア神話のペガサスと、英雄ベレロポーンの物語を再話したものです。
絵がとても美しい絵本です。細かいところまで描き込んであるので、隅々まで眺めるのが楽しい。怪物の絵も迫力があります。
Marianna Mayer マリアンヌ・メイヤー:再話
Kinuko Y. Craft キヌコ・Y・クラフト:絵 1998年
あらすじとしては、才能にあふれ、美男子でもあるベレロポーンは、人気もあったが、それと同じだけ敵も作っていた。その敵の奸計により、王妃との関係をプロイトス王に疑われたベレロポーンは、「PUT TO DEATH THE BEARER OF THIS MESSAGE.(この者を殺せ)」と書かれた王の信書を持って、リュキアの王のもとへと遣わされます。
しかしリキュアの王は、古くからの慣習に従って、十日間は、用件をきかずに使者をもてなします(…緊急の用件だったらどうするんだろう…)
その間、ベレロポーンは、リキュアのお姫様と恋仲になります。リキュアの王さまも、ベレロポーンのことを好ましい青年だと思うようになりました。が、プロイトス王の頼みをきかないわけにもいきません。そこでリキュアの王は、ベレロポーンに、怪獣退治を命じます。
それは、頭はライオン、胴はヤギ、尾はヘビで、口から火を吐く獣、キマイラでした。これまで、多くの勇者が、この化け物を退治にでかけて、戻ってきませんでした。
ベレロポーンはSoothsayer(預言者、占い師)のもとへと赴き、助言を請います。そこで、「地で戦っては勝ち目はない、ペガサスに乗って空中で戦え」との助言をうけます。ベレロポーンはペガサスを探し、女神の助けも得て、ペガサスの背に乗り、キマイラと対決します…
小さい子供さん向けというより、年齢はやや高めの設定な気がします。
しかし、基本的には、英雄が怪物をやっつけて、お姫さまと結婚するという、ある意味、よくあるストーリーですから、絵をみれば、だいたいわかると思います。
キマイラをやっつける方法は、この絵本では、ドラゴン退治と同じで、一箇所だけ、弱点がある…ということになっています。
再話ですので、本来の話とは、変えられている箇所も多々あるかもしれません。
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シンデレラの絵本です。
シンデレラと王子が舞踏会の前にいちど出会っているという要素と、たすけた小鳥による恩返し的な要素が加わっているほかは、よく知られているシンデレラの物語と同じです。
シンデレラの物語で一番よく知られているのはシャルル・ペロー版かと思いますが、そちらは→青空文庫さんで読めます。
また、アンドルー・ラング版も→青空文庫さんで読めます。
Kinuko Y. Craft 絵 Mahlon F. Craft 文の「Sleeping Beauty」2002年
「眠れる森の美女」を再話した絵本です。
あらすじ
子供の誕生を待ち望んでいた国王夫妻に、ある日、お姫さまが生まれます。王さまは国中の要人や、妖精をまねいて宴をひらきますが、十三人いる妖精のうち、十二人しかまねきませんでした。
十二人の妖精たちは、つぎつぎにお姫さまに贈り物をします。すると十三人目の妖精があらわれて、お姫さまに「十六歳で紡錘(つむ)に刺されて死ぬ」という呪いを授けます。
国王夫妻は悲嘆にくれますが、まだ贈り物をしていなかった十二番目の妖精が、呪いをやわらげ、死ぬのではなく百年のあいだ眠るだけ、といったものに変えます。
そして十六歳の誕生日、お姫さまは古い塔で糸をつむぐ老婆に出会い…
「眠れる森の美女」(いばら姫)は、グリム童話やペロー童話に収録されているものが有名です。この絵本では、グリム童話とペロー童話をまぜあわせて再話した、という感じです。
■英語■
アーサー・ラッカム 絵 →こちらのサイトさんで読めます。 |
ウォルター・クレーン 絵 →こちらのサイトさんで読めます。 |
Jennie Harbour 絵 シンデレラなどの物語も収録されています。 →こちらのサイトさんで読めます。 |
Harry Clarke 絵 ほかの物語も収録されています。 →こちらのサイトさんで読めます。 |
表紙画
パトリシア・A・マキリップの「影のオンブリア」 早川FT文庫 |
パトリシア・A・マキリップの「オドの魔法学校」 創元推理文庫 |
■洋書
※洋書はISBNが同じでも別の表紙に変わっていることがあり、下記リンクからご注文いただいても表紙の違うものが届くこともございます。あらかじめご了承ください。タニス・リーの「The Silver Metal Lover」(邦題:銀色の恋人)のアメリカ版。 Bantam Books/1999年/ISBN: 0553581279 |
タニス・リーの「Metallic Love」(邦題:銀色の愛ふたたび)のアメリカ版。 Bantam Books/2005年/ISBN: 0553584715 |
作品リスト
Kinuko Y. Craftの絵本※完璧なリストではありません
絵本のほか、カレンダーや画集などもでています。
1989 | The Twelve Dancing Princesses | 踊る十二人のお姫さま |
1994 | Baba Yaga and Vasilisa the Brave | バーバ・ヤーガ |
1996 | Cupid & Psyche | プシュケ |
1998 | Pegasus | ペガサス |
1999 | King Midas and the Golden Touch | ミダス王 |
2000 | Cinderella | シンデレラ |
2000 | Tom Thumb | 親指トム |
2002 | Sleeping Beauty | 眠れる森の美女 |
メモ
The Twelve Dancing PrincessesAndrew Lang(アンドルー・ラングまたはアンドリュー・ラングとも)がフランスのCharles Deulin による"Les
Douze Princesses Dansantes" を英訳したもので、「あかいろの童話集 The Red Fairy Book」におさめられた話。
「おどる12人のおひめさま」などと訳されます。
もともとは、グリム童話の133番の物語、「Die zertanzten Schuhe」(「おどりぬいてぼろぼろになる靴」「踊ってすり切れた靴」「踊り破いた靴」など)の物語で、それを再話したもの。
グリム童話の場合、負傷して退役した老兵が、十二人のお姫さまのうち、いちばん年長の姫と結婚しますが、アンドルー・ラングの再話では、お城の庭師の少年がいちばん若いお姫さまと結婚することになるなど、随所に違いがみられます。
●グリム童話 あらすじ
あるところに、十二人の美しい姫をもつ王さまがいました。お姫さまたちは、眠るときは寝台を並べたひとつの部屋で眠ります。その扉は、王さまが毎晩、かんぬきをかけて閉めます。
しかし朝になると、お姫さまたちの靴が、ひとばんじゅう踊りあかしたように、破れているのです。
そこで王様はおふれを出します。
お姫さまたちが毎夜、どこで踊るのか、その秘密を明かすことのできたものには、お姫さまたちのうちの一人と結婚し、次の王さまとなる、しかし、三日三晩のうちに秘密を明かすことができなければ、その命をさしださねばならぬ、と。
何人かの王子が挑戦しますが、いずれも失敗して首を切られます。
ある日、ひとりの年老いた負傷兵が、道端で老女と会い、助言を受けます。
王さまになりたければ、お姫さまのさしだすワインを飲まなければいい、と。
そして老女は、姿の消えるマントを老兵にプレゼントします。
老兵は、老女からもらったマントで姿を消し、夜、お姫さまたちの後をつけます。
お姫さまたちは、床に隠された秘密の扉から、地下の国へと降り、そこで、十二人の美しい王子と踊っていました。
老兵は、事の次第を王さまに報告し、十二人のうち、いちばん年上の王女を選んで結婚します。
■参考サイト →Project Gutenberg(英語) 英訳されたグリム童話が読めます
■参考文献 「完訳グリム童話3 謎は解けたよ悪魔さん」角川文庫
●アンドルー・ラング版 あらすじ アンドルー・ラング版では、主人公は、お姫さまと結婚することを夢見る、牛飼いの青年です。ある日、青年は夢のなかで美しい女性と会い、ベルイユ城へ行くようにと言われます。 そこでは大公が、お姫さまたちの秘密をつきとめたものには、好きな姫と結婚し、次の王にするとのおふれをだしていました。 |
ベルイユ城 |
The castle of Beloeil ベルイユ城は、ベルギーに実在する、Château de Beloeilというお城のことです。十二人のお姫さまたちは、そこのお姫さまたちということになっています。 |
青年は、巻き毛の金髪で、容姿が愛らしいことから、お城の庭師として採用されます。そして、お姫さまたちのために、ブーケを作る仕事をまかされます。
一番末のお姫さまは、青年の顔に目をとめて、とてもかわいい、と言いますが、ほかのお姫さまたちに笑われます。姫たるもの、庭師なぞに気をとられるものではない、というのです。
ですが、青年は末のお姫さまのことをすっかり好きになってしまいました。
すると、青年は再び、黄金の衣装につつまれた美しい女性の夢を見ます。
女性は、一方の手には、二本の月桂樹の若木と、桜と薔薇、もう一方の手には黄金の熊手と、黄金の桶と絹の布を持ってあらわれ、月桂樹を二つの大きな鉢植えに植え、黄金の熊手でかき、黄金の桶から水をやり、絹でふいて、十五歳の少女と同じくらいの背丈にのびたら、月桂樹は、どんな頼みにもこたえてくれるだろうと言います。
樹は、ものすごい早さで、ぐんぐん大きくなります。
樹が、十五の少女の背丈くらいになったとき、青年は月桂樹に問いかけます。
「どうやったら姿を消すことができる?」
樹は、白い花を咲かせます。その花をボタンの穴にさすと、青年の姿は消えました。
青年は、夜になるとお姫さまたちの寝室に忍び込み、ようすをうかがいます。
やがて、いちばん年長のお姫さまが手を三回たたくと、仕掛け扉が開き、お姫さまたちは、秘密の階段を降りてゆきます。
金や銀やダイヤモンドの森を抜けると、心楽しいフィドル(バイオリン)の音楽が聴こえてきて、十二人のお姫さまは、王子の漕ぐボートに乗って、湖のむこうの、輝く美しい城へと向かいます。
その城には、少なくとも五十人の王子がいて、すべて、姫たちの秘密を盗もうとして失敗したものたちでした。
王子たちは、魔法の薬を飲まされ、そのために、心が凍結して、ただ踊ることばかり考えている状態となっているのです。
姫たちは、靴に穴があくまで踊りあかします。
次の日、青年は、いちばん年下のお姫さまの花束にだけ、昨夜、お姫さまたちの後をつけたとき、証拠として折っておいた、銀の枝をまぜておきます。 お姫さまは驚きますが、他の姉妹たちには何も告げません。 その晩、青年は再び、お姫さまたちの後をつけました。 そして、また、末の姫の花束に証拠の枝をまぜておくのですが、今度は、ほかのお姫さまたちに見つかってしまいます。 |
お姫さまたちに問われて、青年は、自分が姫たちの後をつけたこと、姫たちの秘密を知っていることを白状します。
しかし青年は、その秘密をばらすつもりはない、秘密にしておく、といいます。
大公がお姫さまのひとりと結婚させてくれるという約束のことは知っているが、自分にはそのつもりはない、と。
しかし、お姫さまたちは、青年に、ほかの王子に飲ませたのと同じ、魔法の薬を与えようと、たくらみます。
青年は、お姫さまたちのたくらみを知っていましたが、命じられるままに、大公の前に進み出でて、お姫さまの秘密さがしに正式に挑戦します。
夜になると、お姫さまは青年を後に従えて、地下へと降りてゆきます。そこで青年は、年長のお姫さまから、順々に、すべてのお姫さまと踊ります。そして末のお姫さまと踊ったとき、末のお姫さまは、青年が最高の相手であると感じます。
やがて青年は、年長の姫の隣に座らされ、黄金の杯をすすめられます。
その杯を手に取ったとき、末のお姫さまが、「それを飲まないで」と叫びます。
「わたくしは庭師の妻となります!」
そのとたん、魔法はとけ、ほかの王子たちも正気に戻ります。
そして全員が、地下の国を脱出すると、城の崩れるような、大きな音がとどろきました。
それから、大公の部屋へとまっすぐに行って、青年は黄金の杯を見せ、姫たちの穴のあいた靴の秘密をときあかしました。大公が約束どおり、好きな姫を選べというと、青年は、「もう決まっています」と言って、いちばん若いお姫さまの手をとります。
そして二人は結婚しました。
■参考サイト →The Baldwin Project(英語) アンドルー・ラングの「The Red Fairy Book」が読めます。また→Project Gutenberg(英語)でも読めます。